よくわかる 目の疾患

失明原因の上位を占める眼科疾患から順にわかりやすく解説します。

網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)

目の断面■ 病気の原因や治療の研究は飛躍的に進みつつありながら、まだ失明原因の上位を占めている疾患に、網膜色素変性症があります。
この病気の発病頻度は人口3000~8000人に1人とされており、ほとんどが遺伝による発病です。

この病気は、網膜に1億数千万個並んでいる、光を感知する働きをする視細胞が年齢よりも早く老化し、機能しなくなってしまう両眼性の病気です。

■ 視細胞が働かなくなった部分は光を感じとれず、映像にならないため、視力が落ちたり視野が狭くなったりします。
最初に現れる症状は、夜や薄暗い屋内で物が見えにくくなる「夜盲(鳥目)」で、その後、視細胞が機能しなくなった部(通常、視野の周辺部分)から視野の狭窄が中心に向かって進行していきます。
幼時は自覚せず、10才頃に気付いたという症例が多くみられます。

■ 症状の進行はとても遅く、5年くらい経過してようやく視野狭窄の進行が少し確認されるくらいです。
視野狭窄の進行の仕方は、
  はじめ輪状暗点
      ↓
  輪状暗点の外側の周辺視野が消失(視野異常がはじまって2~5年以内)
      ↓↓
  視野は10~20度に狭窄して20~40年続き(視力は比較的よい)
      ↓↓↓
  さらに徐々に狭窄が進行
しますが、進行の早さは遺伝子の差異により個人により大きく違ってきます。
視力が暗黒になる方はむしろあまり多くありません。(下図参照)

網膜色素変性症の人の視野

眼底■ 眼底検査をすると、網膜に黒い色素が沈着しており、動脈は細くなり、視神経の萎縮などもみられます。

正確な進行具合を知るためには、ERG(網膜電位図、網膜の電気的な反応を調べる検査)、暗順応検査(どのくらい暗い光までわかるかを調べる検査)、 視野検査等の「見る」機能を評価する検査を参考とします。

■ 90%は常染色体劣性遺伝という形式をとり、常染色体優性、性染色体優性、性染色体劣性の症例もあり、単一な遺伝性疾患ではありません。

この病気の原因は、遺伝子の変異であることが1990年に解明され、あるタイプの網膜色素変性症の患者さんには、視細胞のうち杆体の遺伝子異常(ロドプシン遺伝子変異)があることが明らかにされました。

その後、ロドプシン以外に多くの遺伝子群の以上が網膜色素変性症の発症メカニズムにかかわることが判明しましたが、ほとんどのタイプはなぜ変性が起こるのか、どのように治療すれば有効なのかはまだ判っていません。 今後、遺伝子治療や神経保護治療などの新しい治療が進歩することが期待されます。

■ 視細胞は強い光を長時間受けると寿命が短くなることが動物実験で確認されています。
屋外では、特に紫外線の強い時間帯では、視細胞をいたわるためにサングラスを装用することが望ましいです。 少しでも視細胞を守るため、暗順応改善剤やビタミン剤、網膜循環改善薬などが処方されています。

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