2011年4月 のアーカイブ

心療眼科

2011年4月4日

東日本大震災の被災者の方に衷心よりお見舞い申し上げます。多くの犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈りいたします。今のところ義援金の協力しか出来ていないのですが、新聞やテレビに報道される被災者の方々の姿を目にするたび深い悲しみがこみ上げ無力感につつまれます。

週末に、「心療眼科」の勉強会があり、普段講義を聴く機会がほとんどない、精神医学の先生によるレクチャーを受けました。その中で印象に残った話に、「これまでの精神医学は、人の性格や気質により病気の分類を試みようとしてきた。躁鬱気質や分裂気質などなど。しかしそれが、思い込みや先入観を招き、病気に対する正しいアプローチを邪魔していた。そして精神疾患の診断、治療にはパラダイムシフトが起こった。症状を固定観念ぬきに分析、分類することで世界共通のエビデンスに基づいた治療が始められるようになった。」というものがあります。クレッチマーなどの先人による気質の分類は、私たちが学生の時に真っ先に授業で習った内容ですが、今やそれが先入観として一旦退けられようとしています。例えば、うつ病に対して、以前ではその人の性格や発症原因などを探ることに重きを置かれていましたが、今ではCT で脳に起こっている変化を確認したり、有効な薬物治療が開始されるようになってきました。

思い込みや先入観により、固定観念が築かれ、思考停止になってしまう。ふと、今回の原発事故にもあてはまるのではと思えました。原発は安全であるとの過信。津波被害を受けた直後も、炉内は大丈夫であるとの思い込み。油断や思い込みがあってはならない、人類の存亡に関わる重大なところで、このようなことが起こりうるとは、人の英知の限界を思い知らされるような気がします。科学においても医学においても、過信による油断や思い込みは避けるべきで、当然、今ある原発と今後計画中の原発の安全性の見直しはしっかりやってほしいです。

つい、後ろ向きな気持ちになりがちな時ですが、前向きでいようと意識したいと思います。東北の方々は、大変なことですが、復興に向けて元気を出してほしいと切に願います。日本中、世界中の人々が声援を送っています。